刀 無銘(名物島津正宗)
カタナ ムメイ(メイブツシマヅマサムネ)
概要
幕末よりおよそ一五〇年の間その所在が不明だった幻の正宗。『享保名物帳(きょうほうめいぶつちょう)』に先立って編纂された『継平押形(つぐひらおしがた)』に島津正宗の全体図と刃文が所載されている。本品の刃文とこの押形集に採拓された刃文は、帽子の形状と、物打(ものうち)下の二ヶ所でほつれて食違い、二重刃状に交差する匂口の形状が完全に一致する。刀剣の刃文には一つとして同じ物は無いため、この一致をもって本品は名物帳に「島津正宗 磨上長二尺二寸七分 代金二百枚」と記載された名物刀剣であると考えられる。戦後まで近衛家に伝来し、その後寄贈者である奥田氏に譲られた。