梓弓
あずさゆみ
概要
聖徳太子が13歳の時、仏教をわが国に受け入れるかどうかという問題をきっかけとして、豪族の蘇我氏(そがし)と物部氏(もののべし)が戦いました。太子は蘇我氏の軍に加わったのですが、この時に用いたという伝承をもつ梓弓(あずさゆみ)などの武具一式が伝えられています。梓弓は皮を剥(は)いだ一本の木を削りだし、全体に漆(うるし)をかけたもので、強い弾力を持っています。
共に伝えられた矢はいずれも竹をまっすぐに成形し、漆を拭き込んで仕上げられたもの。特に興味深いのは六目鏑矢(むつめのかぶらや)。六つの穴をあけた部品を大きな鏃(やじり)の根本につけたもので、これを放つと孔に風が通って音が鳴るという仕掛けです。こうした矢は戦いを開始する時の合図などに用いられました。寺院の宝物に武器があるのは珍しいことですが、法隆寺では聖徳太子の信仰に伴い、その遺品とされる武器が伝えられてきました。