漆皮箱
しっぴばこ
概要
漆皮は素地に鞣した牛、鹿、猪などの皮を用い、それを木型に当てて成形し、布着せを施した後、黒漆あるいは透漆で仕上げる。その製法は唐から伝わったものとされ、奈良時代には盛んに作られたが、獣皮の素地は歪みが生じやすかったためか木地へと移り、後代には作られなくなった。
本品は、その蓋が奈良時代に制作された大変貴重な作例である。現存する漆皮箱は、正倉院宝物と法隆寺献納宝物(重要文化財、東京国立博物館所蔵)にあるが、民間にあるものはごくわずかである。また、身は正倉院宝物や国宝「玉虫厨子」などの模造も手掛けた吉田立斎(リッサイ、辰之助、1867-1935)によるもので、蓋の雰囲気によく調和した見事な作である。武藤三治(1867-1934)旧蔵。