四季山水図
しきさんすいず
概要
室町時代を代表する禅僧で画家の雪舟(せっしゅう)が描いた作品です。雪舟は京都の相国(しょうこく)寺で修行したのち、30代半ばで山口へ移ります。守護大名、大内氏のサポートを受けて活躍し、応仁元年(1467)48歳のときに、大内氏が派遣した使節団とともに中国・明に渡り、明の様々な絵画様式を学びます。この作品は、雪舟が留学中に明の画風にならって描いたもので、明の王室に献上したものではないかと考えられています。
それぞれの画面には、春・夏・秋・冬の風景が描写されています。冬に注目してみると、他の3つに比べて背景の空が暗いことがわかります。これは冬の絵であり、夜の絵でもあるのです。実はこれらの作品、季節だけではなく、一日の移り変わりも表現しています。確認してみましょう。梅の花が咲く「春」は、人々が動き始める「朝」。晴れ渡る空が広がる「夏」は、明るい昼間の活動風景でしょうか。「秋」は夕暮れ。画面の一番下に描かれた家の屋根から突き出た棒の先についた旗は酒旗(しゅき)といって、酒屋で夕方お酒の提供が始まった合図です。そして、「冬」は雪を被った白い山が夜の闇に浮かび上がっています。
モチーフは緻密に描きこまれているので、それぞれの絵の中でどんなストーリーが展開しているのか想像しながら、季節や時間を探してみてはいかがでしょう。
また、画面の大きさも見どころです。掛軸に描かれた山水図としては非常に大きな作品です。1つでも十分迫力がありますが、4つ並んだ光景には圧倒されるかもしれません。遠くから見ても、近くから見ても、楽しめる作品です。