秋冬山水図
しゅうとうさんすいず
概要
室町時代の禅僧画家、雪舟(せっしゅう)によって描かれた山水画の傑作です。もとは京都の曼殊院(まんしゅいん)に伝来しました。雪舟は如拙(じょせつ)や周文(しゅうぶん)など、日本の先輩画家の画風を学ぶとともに、明時代の中国にも留学し、当時の様々な絵画様式を学んでいます。その結果、独自の構築性と力強い筆致を持った画風を確立し、以後の山水画に大きな影響を与えました。
2幅のうち、「秋景」は、川沿いに道が奥へと伸び、遠くに楼閣が見えます。モチーフは画面の下半分にまとめられ、上部の空間は秋空の広大さを感じさせます。一方「冬景」では大胆に切り立った崖を中心に据え、対照的に建物を小さく見せることで、厳しい冬枯れの様子が描き出されています。
どちらの画面も下の方から見ていくと、近いものから遠いものへ、モチーフを順にたどることができ、それぞれの位置関係が明確に描き分けられていることに気付きます。そこには雪舟以前の山水画には見られない絵画の理知的な構築性が強く感じられます。小さな画面にあらわされた広大で奥深い世界をお楽しみください。