ノルマンディ―の風景
ノルマンディ―のふうけい
概要
ノルマンディ―の風景
ノルマンディ―のふうけい
埼玉県
19世紀半ば
油彩,板絵,額装
寸法 34.5㎝×57.5㎝,
画面右下に「E. Boudin」のサインあり
1点
埼玉県さいたま市浦和区常盤9-30-1
重文指定年月日:
国宝指定年月日:
登録年月日:20170731
株式会社 丸沼倉庫
登録美術品
本作品は,19世紀のフランスの画家で,外光のもとで描いた風景画を数多く残すウジェーヌ・ブーダン(Eugène Boudin)の作品である。
ブーダンは,1824年フランス北西部のセーヌ川に位置するオンフルールに生まれ,対岸の港町ル・アーヴルで育った。水夫の父を持ち,自身は印刷屋の店員を経て,知人と共同で画材兼文房具店を開業している。この文具店には,ミレーやトロワイヨン等の多くの芸術家が訪れており,彼らとの交流を通して,ブーダンは本格的な画家を志すこととなる。彼は特定の師のもとでアカデミックな教育を受けることなく,ほぼ独学で画家となり,戸外の外光のもとで自然から直接描くことを重視した。
1859年にはサロンに初めて出品して,フランスの美術業界に広く知られることとなる。1860年代からは海辺の風景を数多く手がけ,「海景の画家」と称された。柔らかな光と揺らめく大気の中,さざめく波や水平線の向こうの空といった時間とともに微妙に変化してゆく自然の事象を追及し,また海辺にたたずむ人々を純粋色で斑点のような荒いタッチで表現した。こうした制作態度と印象派へもたらした影響から,ブーダンは,印象派の先駆的存在と評価されている。
本作は,板を支持体とした油彩画で,画面右下に「E. Boudin」のサインがある。パリ留学から帰郷した1854年~1857年頃に制作されたと考えられる作品で,穏やかな田園風景を主題とする。なだらかな田園の遠景に特徴的な樹形の木々や家屋を配し,手前には水面に樹木や空を映す小川,中景右よりに豊かな枝ぶりの樹木とその木陰の人物,そしてその奥に2頭の牛を描く。田園風景は丁寧に緻密に描かれているが,画面上半分以上を占める空の描写は大胆かつ軽快で,青空を横切る雲に躍動感がある。
ブーダンは,幼少年期をル・アーブルで過ごしたクロード・モネと出会い,モネに外光のもとで自然を描くことを勧め,モネの芸術的志向に影響を与えた人物としても広く知られている。
本作は,モネが17歳で描いた≪ルエルの眺め≫(1858年,登録美術品第9号)の風景と,小川や木の茂み,川辺の草花の植生等,複数の類似性が指摘されており,ブーダンとモネとの関係性を考える上でも貴重な作品といえる。
本作は,ブーダンが広く美術業界に知られるようになる以前の30歳代前半に描かれた希少な初期作品であり,印象派へ与えた影響を検討する上でも学術的に貴重な作品である。
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