越前鳥の子紙
えちぜんとりのこし
概要
越前鳥の子紙は、福井県越前市に伝承されている手漉きの雁皮紙の製作技術である。
雁皮紙は、ジンチョウゲ科の雁皮を原料とする紙で、奈良時代から漉かれてきた我が国の主要な手漉和紙の一つである。かすかに黄味を帯びた色合い、滑らかで光沢のある紙肌、虫害に強く耐久性に富むという特色がある。「鳥の子」は、中世から用いられている雁皮紙の呼称の一つであり、『下学集』(文安元(一四四四)年)によると、紙の色が卵殻の色に似ていることに由来すると言う。
越前では、室町時代には既に料紙用の鳥の子紙が漉かれ、十八世紀になると大判の間似合紙(幅三尺強)等も製作されるようになり、明治時代以降は襖紙が盛んに漉かれた。越前はその後も、我が国における鳥の子紙の主要な産地の一つとして現在に至る。
越前鳥の子紙は、雁皮の白皮(しろかわ)を原料に、トロロアオイの根やノリウツギの樹皮を「ねり」として、竹簀又は紗張りの竹簀を用いた流し漉きの技法で漉き、銀杏の干し板等に貼って天日又は室で乾燥させて製作する。繊維の短い雁皮を均一な紙に漉きあげるには高度な技術が必要とされるが、越前では厚手の襖紙から極薄の比較的小さな紙まで、多様な鳥の子紙を漉く技術が伝承されている。
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