東名遺跡
ひがしみょういせき
概要
標高3mに立地する167基の集石遺構と8体分の埋葬人骨が集中する墓域から成る居住域,標高-0.5mから-2mの斜面部に広がる6か所の貝塚,さらには標高-2mから-3mの低湿地に築かれた155基の貯蔵穴群によって構成される,集落構造の全体が明らかな縄文時代早期末葉(約7,000年前,較正年代約8,000年前)の遺跡である。また,生活用具や食料残滓の遺存状態も極めて良好であることから,生活全般においてその内容の復元を可能にする遺跡であり,当該期では九州や西日本はもちろん日本列島全体を見渡しても類例がない。特に,貝塚から出土する骨角製品や貯蔵穴群から出土する700点を超える編み籠からは,当該期の造形的に優れた文様の実態を知ることができ,さらにこれらが国内では最古級に属することから,その製作技術を含め系譜についても注目されるところである。このように東名遺跡は,日本列島の縄文時代早期末葉の生活復元に再考を促す可能性が高い遺跡として重要である。