彦崎貝塚
ひこざきかいづか
概要
彦崎貝塚は、瀬戸内海に面した旧児島湾の南岸に所在する、縄文時代前期から晩期にかけての貝塚である。旧児島湾岸は、西日本屈指の貝塚密集地域として著名で、彦崎貝塚は縄文時代前期及び後期の標識となる彦崎式土器や、多数の縄文人骨が確認された遺跡として学史的にも重要である。
岡山市教育委員会(旧灘崎町教育委員会)が平成15年度から18年度まで実施した発掘調査では、南北100m、東西80mに及ぶ縄文時代前期の貝塚を最大として、晩期まで同一地点に重層的に形成された厚さ1.7mの貝層が確認された。この他に、25体の屈葬埋葬人骨をはじめ、舌状丘陵先端部の低湿地部ではドングリ貯蔵穴も確認された。出土した貝類からは、貝類採集の対象地が縄文時代前期は干潟、中期は岩礁、後期は幅広く干潟と岩礁、晩期はまた干潟へと変遷していった様子がわかる。
彦崎貝塚は、縄文時代前期から晩期にかけて、貝塚や低湿地部を含めた集落の構造や変遷状況が判明した、大規模で遺存状態がきわめて良好な貝塚である。また、出土遺物からは当時の生活様式や生態系の復元が可能になり、石器石材からは瀬戸内海を越えた交流も確認でき、西日本の中でも特に重要な貝塚として位置付けることができる。