甑島長目の浜及び潟湖群の植物群落
こしきしまながめのはまおよびせきこぐんのしょくぶつぐんらく
概要
長目の浜は2代薩摩藩主(さつまはんしゅ)島津光久(しまづみつひさ)が「眺めの浜」と呼んだことが由来とされ,上甑島(かみこしきしま)北部で北から南東方向に伸びる,長さ4km,幅40~100mの砂州(さす)が発達してできた浜である。上甑島北部にはこの砂州により形成された潟湖群(せきこぐん)(海跡湖(かいせきこ)群)が分布している。指定対象は,長目の浜と,北から続く海鼠池(なまこいけ),貝池(かいいけ),鍬崎池(くわざきいけ)の3湖沼,砂州上の植物群落である。
砂州上では季節風の影響を受け,北西部から風衝草原(ふうしょうそうげん),風衝低木林(ふうしょうていぼくりん),低木林と変化している。また,砂州上に堆積している砂礫の大きさが北側から南東に向かって小さくなり,海水の透水性の違いで海鼠池,貝池,鍬崎池の順に塩分濃度が低下し,植せ生もそれに対応して変化している。海鼠池は干満差や塩分濃度が高く,汀線際にはハマボウ群落を含む汽水域(きすいいき)植生,その背後の砂州上には,ウバメガシ群落等の風衝低木群落が発達する。貝池では泥湿地植生,風衝低木林等が発達している。湖内には嫌気性光合成細菌(けんきせいこうごうせいさいきん)であるクロマチウムが生育し注目されている。鍬崎池は干満差がなく,塩分濃度も低く,抽水(ちゅうすい)植物群落,湿性地植生が発達し,希少なハマナツメ群落等の低木林も成立している。このような砂州上に発達した植物群落は全国的にも少なく,性質の異なった三つの潟湖群とともに学術上貴重である。