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前十五番歌合(彩牋)

さきのじゅうごばんうたあわせ

概要

前十五番歌合(彩牋)

さきのじゅうごばんうたあわせ

その他 / 鎌倉 / 近畿

京都府

鎌倉

1巻

京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85-4

重文指定年月日:20040608
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

 『十五番歌合』は、古来の歌仙三〇名の優れた和歌一首ずつを左右に結番した歌合形式の秀歌撰である。撰者については、『後拾遺和歌集』序に大納言藤原公任【きんとう】(九六六~一〇四一)が三十六歌仙を撰んだことを記し、次に「十あまり五つがひの歌を合せて世につたへたり」と記していることから公任撰といわれ、寛弘五年(一〇〇八)前後の成立と考えられている。
 歌人三〇名の歌各一首を組み合わせて十五番の歌合に仕立てたものが、同じころに二種撰集されている。入撰歌人の時代の古新に従って、「前十五番歌合」「後十五番歌合」と呼んで区別している。
 『前十五番歌合』は、一番に『古今和歌集』撰者の紀貫之と凡河内躬恒、二番に素性と伊勢を並べ、十五番に『万葉集』の柿本人麻呂と山部赤人を番えている。公任の個人的な評価基準によって撰ばれたもので、公任の和歌に対する見識を歌合の形式によって範を示したものとみられる。
 『前十五番歌合』の伝本には、伝藤原公任筆で国宝の『十五番歌合(彩牋)』(尊経閣文庫蔵)一巻がある。平安時代の古筆で八首のみの残欠である。この一連のものに『十五番歌合断簡』(二番、重文、藤田美術館蔵。六番、重文、瀬津巌蔵)がある。尊経閣文庫本以外にも、宮内庁書陵部蔵本、水戸彰考館本、松平文庫本(島原公民館蔵)、内閣文庫本(国立公文書館蔵)、群書類従本などが伝存するが、多くは近世の写本である。
 本巻の体裁は巻子装。料紙には梅折枝文様、花菱文様、紅葉文様、波文様の四種類の文様を雲母引【きらび】きした上に、金銀の砂子、切箔、野毛を霞状に散らす装飾料紙が用いられている。裏にも霞引銀箔散がみえ、華麗な料紙と認められる。流布本との相違は、十一番と十二番が入れ違い、十一番左の傅殿母上と右の帥殿母上の作者名が記載されていないところである。本巻はその美麗な料紙によって古筆切として尊重されたためか、八番右第五句目と九番歌の一紙(一〇紙目)が切り取られて、その部分は近世の装飾料紙によって補われている。
 本巻は、光厳天皇(一三一三~六四)の宸筆【しんぴつ】と伝えられるもので、また本巻の僚巻である別置御物本『後十五番歌合』も光厳天皇宸筆と伝えられている。両巻とも同筆で、おおらかで優雅な筆致による書風は、書写奥書がないものの宸翰にふさわしいものである。御物本から分かれてきたと想定されるが、伝来は全く不明である。
 『前十五番歌合』の完本として貴重であり、典雅な料紙に、おおらかな筆致で認められた優美な書風からみて、鎌倉時代後期の宮廷の調度手本として制作されたものと思われる。

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