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四十番歌合〈建保五年十月十九日/〉

よんじゅうばんうたあわせ

概要

四十番歌合〈建保五年十月十九日/〉

よんじゅうばんうたあわせ

その他 / 鎌倉 / 近畿

京都府

鎌倉

1巻

京都市上京区下長者町通新町西入藪之内町85-4

重文指定年月日:20040608
国宝指定年月日:
登録年月日:

国(文化庁)

国宝・重要文化財(美術品)

 本巻は建保五年(一二一七)十月十九日に、順徳天皇(一一九七~一二四二)が催した内裏歌合である。題は「春雨」「夏月」「秋露」「冬風」「変恋」の五題。作者は順徳天皇、藤原知家、藤原為家など計一六名である。判者は順徳天皇であるが、名を隠して催された。
 この年の十月には、十六日に内裏当座御歌合、十九日に本巻の歌合、二十二日に内裏当座和歌御会など天皇の主催による歌会が頻繁に行われていたことが『順徳院御集』などから知られる。
 本巻は歌合開催時からほど遠からぬころに書かれたとみられる。近時新出の古写本である。本歌合の伝本には、①禁裏本(宮内庁書陵部蔵)、②内閣文庫本(国立公文書館蔵)、③群書類従本などが存するが、いずれも江戸時代の写本である。また、各写本とも四十番右歌「うしと見しちぎりを夢」の第二句の末尾一文字と第三句五文字の六文字を欠いている。六文字の欠は本巻の欠損部分と一致することから、諸写本は本巻を祖本としていることが判明する。また、二十八番右の藤原範綱判詞「こて」の右脇に「本マゝ」と注記するが、禁裏本にも同注が書写されていることから、本巻が禁裏本の親本と認められる。
 本巻の体裁は巻子装で一六紙からなる。紙背に相剥ぎされた痕跡がみえ、二〇センチメートル前後の幅で折られた折線が現れている。この折線は、打紙にした続紙を折本装にして書写したときのものである。折本装による書写では、歌と作者の位置を示す天三地一の押界があり、半葉一二行で書写している。現在は巻子本に仕立て直されている。本巻一紙目後半に切除があり、作者一覧の「藤原助連 御製 右方 範宗朝臣 伊平」が脱落している。禁裏本には、この脱落箇所の記載がみえることから、本巻からの脱落は禁裏本の書写以降になる。
 筆者は箱の墨書に「為家卿筆」と鑑定しているが、為家の書風とは相違する。しかし、書風や料紙などからみて為家ころの鎌倉時代中期を降らない書写本と認められる。また、本巻が禁裏本の親本となると、その伝来は冷泉家の可能性が高い。
 本巻が四十番歌合の祖本であり、順徳天皇の歌学書である『八雲御抄』とともに、判者として和歌を批評することで、天皇の歌風が判明する史料であり、鎌倉時代中期の書写になる現存最古写本として貴重なものである。

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