沈金箱「幽玄」
ちんきんばこ「ゆうげん」
概要
沈金は、漆芸の装飾技法の一つで、漆地を沈金ノミ(沈金刀)で彫り、彫溝に漆を擦り込んで金粉や金箔を入れ、文様を表す技法である。中国で宋代から行われていた技法で、室町時代には我が国でも始められたと考えられる。
雪を被った竹林が陽光を浴びながら微風にそよぎ、その傍らを小川が流れる冬の風景を沈金で描いた作品である。沈金の技法は、線彫、点彫、コスリ彫のほか、作者が考案した角ノミによる「一刀彫」の4種。粉入れの工程では、プラチナ粉を全体に入れた後、松煙、カーボンを重ね、さらに部分的にプラチナ粉を加え、全体の調子を整えて仕上げている。角を大きく丸めた印籠被蓋造の箱の木地は、桐材の厚板で作られた指物の箱から、刳物の手法で薄く削り出されたものである。
平成21年度文化庁工芸技術記録映画「沈金-前史雄のわざ-」の対象作品である。