金銅五鈷杵
こんどうごこしょ
概要
小形の金銅五鈷杵(こんどうごこしょ)である。把(つか)中央の鬼目(きもく)は二重の輪郭を持ち、やや大形で突出している。蓮弁帯は六葉間弁付の二重弁で、二線の素文紐で細めに約している。蓮弁のしべは縦筋のみ刻み、魚々子(ななこ)タガネは用いていない。脇鈷(わきこ)は牛角形で、根元で既に大きく外側に開き、嘴形(くちばしがた)付近では曲がり具合は小さく、先端近くで強く内側にカーブしている。嘴形は唇形にH状の筋を刻んでいる。脇鈷側面の稜角に沿って樋(ひ)を刻み、脇鈷と脇鈷の間にも樋は延長している。小ぶりな品であるが、鬼目が力強く、また蓮弁帯の約条を強く絞るなど特色ある造形の作品である。脇鈷の形が牛角形であることから鎌倉時代でも後期の作品であることがうかがえる。
古玩逍遥 服部和彦氏寄贈 仏教工芸. 奈良国立博物館, 2007, p.38, no.20.