上市黒川遺跡群
円念寺山経塚
黒川上山墓跡
伝真興寺跡
かみいちくろかわいせきぐん
えんねんじやまきょうづか
くろかわうえやまはかあと
でんしんごうじあと
概要
上市黒川遺跡群は富山県東部、北陸を代表する霊峰立山山麓に近接して営まれた中世の遺跡群であり、円念寺山経塚、黒川上山墓跡、伝真興寺跡から構成される。経塚は細い尾根上に24基が密集しており、12世紀後半の短期間に連続して築かれ、石組みの主体部を設けている。珠洲焼きを主とした経筒外容器や密教法具の独鈷杵や磬などを含む貴重な埋納品が出土している。墓跡は経塚の対岸の丘陵尾根上にあり、12世紀後半から15世紀まで継続する。墳丘をもつものを主に67基があり、火葬骨を納めた蔵骨器が多数出土している。その近隣の丘陵上にある伝真興寺は本堂・塔などからなる寺院であり、確認される遺構は中世後期のものであるが、平安時代から中世前期の遺構もある。経塚と墓跡は中世の開始期にほぼ同時に成立するものであり、出土遺物から在地領主層がその主体者と推定される。この地は立山山麓にあって古代以来寺院があり宗教的な場であったことから、経塚と墓が関連して設けられて、墓と寺院は中世後期まで継続したものと考えられる。このように本遺跡群は経塚や墓などの具体的様相を示すだけではなく、ともに関連して中世の宗教や信仰、葬送の在り方と在地社会の関係などを示すものとして重要である。