紙本墨画四睡図
概要
中国の禅林に行われた水墨人物画の遺例は、概して粗放な筆墨を弄するものや、著しく筆跡を省略したものが多いが、それらに対して本図は、極細の線描を主体とした白描の技法による秀作として注目される一作である。この画法は北宋の李公麟によって復興され、禅林の絵画に次第に影響を深めていったと思われ、わが国に伝来しているものには十六羅漢図が多いが、本図は白描画としてはより本格的であり、しかも岩の形や皴法は元時代の文人画のそれと通じるなど興味深い要素を持っているといえよう。図には平石如砥など三人の僧の賛があり、うち華国子文が至正十一年(一三五一)に示寂していることから、製作年代もほぼ推量することができる点も貴重である。