桜井神社拝殿
さくらいじんじゃはいでん
概要
桜井神社拝殿 一棟
桜井神社は創立、沿革ともあまり明らかでない。拝殿建立の年代もまた不明であるが、様式上からは鎌倉時代後期のものと推定されている。桁行五間で、円柱の上に舟肘木をおいて桁をうける。中央一間を土間の通路とした割拝殿の形式を持っているが、これは近年改造されたもので、元来は五間とも床を張っていた。正面の中央間を除くほかの四間は、桟唐戸を入れている。側面は三間に分つが、装飾としては梁間一杯に大虹梁をかけ、蟇股二個をおき、その上に虹梁をかけ、さらに蟇股をおいて棟木をうけている。つまり二重虹梁蟇股式の架構法である。内部においても、妻と同様な架構を現している。
二重虹梁蟇股は奈良時代以来用いられた形式で、この拝殿はこの古式に則っているのであるが、各部には鎌倉時代の様式を示している。数少ない拝殿遺構のひとつとして貴重なものである。
【引用文献】
『国宝辞典(四)』(便利堂 二〇一九年)