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アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観

あいぬのでんとうときんだいかいたくによるさるがわりゅういきのぶんかてきけいかん

概要

アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観

あいぬのでんとうときんだいかいたくによるさるがわりゅういきのぶんかてきけいかん

文化的景観 / 北海道 / 北海道

北海道

沙流郡平取町

選定年月日:20070726
管理団体名:

重要文化的景観

「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」は、日勝峠を源とするシシリムカ(沙流川)の流域に展開する。沙流川流域とアイヌの人々との関係は深く、川原に生育するヤナギはイナウ(木弊)の製作に不可欠であり、広い沢筋に発達するハルニレの林床にはトレプ(オオウバユリ)やプクサ(ギョウジャニンニク)、プクサキナ(ニリンソウ)といったアイヌの人々の生活にとって有用な植物が多数生育している。沙流川は、数年から数十年周期の大雨で大氾濫を起こし、これらの植物を洗い流してしまう。この現象は長期的にみればササ類の繁茂を防ぐことによってハルニレの林に新たな有用植物の再生を促し、川筋にアイヌの人々の安定的な生活圏を作り出すことに結びついた。また、沙流川中流域に形成された河岸段丘面には、近代開拓によってこの地域に移住した人々が営んだ牧野林が広がっている。牧野林は、エゾミヤコザサが冬期に馬の餌となるため、北海道で広く行われた林間放牧によって生まれた独特の森林利用の形態である。今日では外国産種子の播種によって人工的な牧草地が増加し、まとまった特徴が認められる状態で維持管理が行われているものとしては、日高地方に残るものが最大規模である。以上のように、「アイヌの伝統と近代開拓による沙流川流域の文化的景観」は、アイヌ文化の諸要素を現在に至るまでとどめながら、開拓期以降の農林業に伴う土地利用がその上に展開することによって多文化の重層としての様相を示す極めて貴重な文化的景観である。

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