北国の冬
概要
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北国の冬
Winter of the Northern District
1908年
油彩・麻布 53.4×73.2㎝
1908年第2回文展で、山本森之助の《曲浦(きょくほ)》など12点とともに三等賞を受賞し、政府の買上品となった作品。明治40年代に入り、海外に留学し印象派以後の新しい造形思想の洗礼を受けた画家たちが次々と帰朝し、個性的作品を発表し始めようとしていた時期にあって、この作品はそれらの動向とは無関係に、いまだ地味で古拙な美をたたえている。ねっとりとした絵の具の物質感、動きのない、堅固で重々しい画面は、北国の雪景色の静かで、寒々とした感じを効果的に伝えている。細かな点景をあまり持ち込まず、幾つかの大きなブロックで画面を構成し、雪国をおおう一面の白い雪と樹木の深い緑を対照させるなど、画面構成上でも苦心のあとがうかがわれる。「稍(やや)デコラチーブな面白味がある」とされ、同じ文展で二等賞を受賞した吉田博の《雨後のタ》よりも優れていると評された(美術新報)のも、それらの工夫によるところが大きい。