匂い
概要
83 藤島武二(1867−1943) 匂い 1915年
鹿児島市生まれ。はじめ日本画を学ぶが洋画に転じ、曽山幸彦、山本芳翠らに学ぶ。1896年東京美術学校助教授に就任、また同年白馬会の結成に参加。1901年より雑誌『明星』の表紙を担当。05−10年渡欧、帰国後東京美術学校教授。12年本郷洋画研究所設立。13年文展で三等賞受賞。24年帝国美術院会員。34年帝室技芸員。37年第1回文化勲章受章。
藤島の画業は、繊細さと装飾性を兼ね備えた浪漫主義的な前期作品と、造形性に主眼を置いた明快で力強い後期作品とに大別できよう。渡欧体験がその境目となっているが、この作品《匂い》は、帰国後の移行期にあたる作品である。チャイナドレスをまとい、香を楽しむ女性には、浪漫主義的な優美さがまだ認められるが、一方で筆致や色彩はより単純化され、また女性の腕や左端の花瓶などが形成する画面構成の堅固さなど、造形的要素への関心の強さもうかがえる。