韓天寿賛天産奇葩図
概要
この作品は、鶴亭の描いた墨蘭に韓天寿が賛を寄せたもので、当館で開催した「三重の美術風土を探るII 近世の絵画」展に出品された。
鶴亭(1722~85)は、法号を海眼浄光といい、長崎の聖福寺で嗣法した黄檗僧で、熊斐に画を学んで鶴亭と号した。
後に、上方に移り、熊斐を通して学んだ沈南蘋の画法を伝えた。
また韓天寿は江戸時代を代表する書家のひとりで、京都に生まれたが、のち松坂(三重県松阪市)の豪商中川家を継ぎ、松坂に住んだ。
池大雅は天寿の親友のひとりで、その関係を頼ってしばしば松坂を訪れている。
中川家の隣には、継松寺という真言宗の寺院があり、かつては大雅の作品数十点を収めていたという。
同寺には、床画として鶴亭の描いた「芭蕉図」「墨梅図」があり、天寿との親しい交遊と松坂来訪の可能性が知られる。
本作品は、鶴亭の松坂来訪時に、親しい天寿とのあいだに交わされた文雅の交遊をあとづける資料として貴重なものである。