青い服を着た若い女
概要
正面向きの若い女性の肖像画。黒髪の女性は、紺色の服を着て真っ白な襟の周りに黒いリボンを結んでいる。髪や服、背景には粗いタッチも見られる一方、なめらかな肌は筆あと一つ残さず入念に仕上げられている。皮膚の下からは青色が透け、頬はバラ色に染まる。
作者ルノワールはパリで育ち、シャルル・グレールの画塾に学んだ印象派の画家。同派の画家の多くが風景画制作を実験の舞台としたのに対し、ルノワールは人物画の制作に自らの活路を見出し、同ジャンルにおいて明るく幸福感あふれる優作を多くのこした。
この作品を手がけた頃、画家は対象の固有色に囚われない革新的な色彩表現に取り組む傍ら、注文による肖像画制作によって自身の生活を支えていた。制作の経緯や像主は明らかでないが、堅実な技法で描かれた本作も、そうした肖像画のうちの一点と考えられている。抑制の効いた色調やシンメトリーに近い構図が、像主のまとう落ち着きや楚々とした雰囲気を際立たせている。