碗
わん
概要
黒褐釉をかけたクメール陶器の小型碗である。底部は露胎の平底であり、回転糸切り痕が確認される。風化が著しく、釉が薄い部分は剥げて胎土が露出する。クメール陶器とは9世紀から15世紀までの間、カンボジアを中心としてタイからマレー半島中部に版図を広げ繫栄したクメール王国で焼かれた施釉陶器である。9世紀末に登場した当初は、乳白色から明緑色の灰釉であった。しかし、12世紀に黒褐釉をかけた器種が主体となり、13世紀になると黒褐釉の光沢が無くなり厚さにもムラが生じる。本品はクメール陶器では類例の少ない回転糸切りの採用が特異である。東南アジア固有の陶磁文化を生み出したクメール陶器の実例として、学術的に貴重な資料である。