三彩壺
さんさいつぼ
概要
白い化粧土を薄く掛け、緑釉を地とする梅花文を胴部全体に散らす。梅花文の花弁は蝋抜き技法(注)で周囲の緑釉をはじき、化粧土を露出させることで白く見せている。花の中心に置かれた一点の褐釉で蕊を表現する。傾斜の大きな器面では、花弁と花弁の隙間を緑釉と褐釉が筋状に流れ落ちてたがいに滲む。短くも力強く湾曲する頚部と、玉縁の分厚い口縁部は内外両面に褐釉が施される。
ふくよかな胴部と短い頚部に特徴づけられる本作のような壺は、唐三彩の典型的な器種のひとつで「万年壺」と呼ばれた。なかに穀物を入れ、死者があの世で永遠にこれを食べるという考えが命名の由来であるが、実際に穀物の入っていた例は見つかっていない。俗説の当否はともかく、この器形の壺が当時の有力者の墓に盛んに副葬されたことにちなんだ命名ではある。
(注) 蝋抜き技法とは、白化粧を施した素地のうえ、あるいは透明釉をかけて焼成したうえに撥水性と可溶性のある蝋のような物質を貼りつけ、その周りに緑釉・褐釉などの有色釉をかけて焼成する技法のことである。焼成後は溶解した蝋の部分だけが化粧土、ないし透明釉層を挟んだ化粧土で白く映る。