吉野曼荼羅
よしのまんだら
概要
本「吉野曼茶羅」は、山内花祭りの鍵取り盤敷として代々花太夫をつとめてきた榊原家に伝来した絵画史料である。花祭りは江戸初期(寛永~寛文年間)に大神楽を再編成して創出された霜月神楽であるが、これまで花祭り創出の経緯、時期、創始者など不明な部分が多く、またそれを実証する資・史料も乏しく、その研究は停滞していた。現在、大神楽の内容を伝える各資・史料では、その中心祭儀「浄土入り」において、「じやうどに本尊をかけるべし」(『御神楽日記』)、「浄士に絵を掛け」(『神楽役割帳』) と記録されていることから、白山の中心に曼茶羅が掛けられたことが知られていたが、その実物は不明であった。本「吉野曼茶羅」は、そうした大神楽研究の空白部分を埋める重要な史料である。また大神楽・花祭りにおいて現存する唯一の絵画史料としても貴重である。さらに本曼茶羅に描かれた中心の尊格が、修験道の主尊「蔵王権現」であることによって、大神楽・花祭りが豊根村に土着した修験によって創出されたものであることを実証する史料である。さらに今後の研究に多くの情報を提供する有効な史料である。