玉杖形石製品
ぎょくじょうがたせきせいひん
概要
玉杖(ぎょくじょう)とは、美しい石で作られた古墳時代前期の儀式用の杖(つえ)のことです。この玉杖は、碧玉(へきぎょく)という、緑色で光沢のある石で作られています。一部欠けているところから、中には鉄の芯棒が通っていることがわかります。玉杖は、鉄の芯棒に管(くだ)状にした碧玉、管玉(くだたま)をいくつか通した後、頭部をつけて作られたのです。頭部に彫りだされた2つのカーブした形は、呪術的な力がこめられた装身具、勾玉(まがたま)で、この杖の性格を象徴しています。また、頭部の両端をとがらせているのは、鹿の角(つの)のようなものを模しているのかもしれません。当時の人々は角に特別な力を感じていたといわれています。
この玉杖は、古墳に被葬者(ひそうしゃ)と一緒に埋められたものです。実は、こうした副葬品(ふくそうひん)から古墳に葬られた権力者の社会的な性格がわかります。古墳時代前期の古墳からは、この杖に代表されるような呪術的なものが見つかっています。つまり当時の権力者は、呪術で地域を治める、宗教的な役割を担っていたのです。しかし、時代が下る後期の古墳からは、馬に関係する道具や、黄金にきらめく装身具などが見つかっており、権力者がより現実的な力を持ち始めたことがわかります。これは、古墳時代半ば以降、朝鮮半島から人や馬が渡ってきたことがきっかけの一つとと考えられます。縄文時代以来の生活様式や美意識は、大陸の影響を受けて急速に変化していくのです。