富士画賛「冨士の根の」
ふじがさん ふじのねの
概要
烏丸光広(1579-1638)による富士山を題とする墨画と和歌賛。光広は徳川家康や秀忠に厚遇され、朝廷と江戸幕府との調停役を務めたことから、駿府や江戸を訪れるためたびたび東海道を行き来した。その際に富士山を実見し、その姿を詠んだ歌が光広の歌集『黄葉和歌集』に多く収まる。また光広による江戸下りの紀行文『東行記』をはじめ富士山を題とした画賛の作例も複数が知られる。本作は中央に富士山とその麓にたなびく雲・霞を淡墨で素早く描き、その左右に富士の自詠を一首書き付けたもの。料紙全体における富士山と文字の配置、変化する墨色が見事である。詠歌「冨士の根の」は『黄葉和歌集』には収められておらず、本作以外では確認できない。