牡丹蝶彫擬鼈甲櫛
ぼたんにちょうほりべっこうくし
概要
鼈甲に擬した馬爪(ばず)製、深川利休形の挿櫛である。鼈甲は舶載の高級品で、馬爪製の櫛類は享和年間(1801~1804)に鼈甲が高騰した際に考案されて流行した。利休形は、『玳瑁亀圖説』によると江戸で寛延・宝暦頃(1748~1764)に大ぶりなものが流行したが、文政8年(1825)以降の江戸において櫛が小型化する中で、小ぶりな深川利休形が考案され、京・大坂にも伝播した。京・大坂のものは親歯の幅が広い。擬鼈甲地に毛彫と肉合彫で牡丹に蝶を表す。「道笑斎」の銘がある。作者の景井道笑(1828~1884)は幕末・明治の大坂の根付師として知られる。 花柳章太郎(1894~1965)の旧蔵品で平成15年(2003)に遺族の青山久仁子氏より国立劇場へ寄贈された。