埴輪 挂甲の武人
はにわ けいこう ぶじん
概要
埴輪 挂甲の武人、東京国立博物館の誇る国宝の埴輪です。全身を甲冑で固め、大刀と弓矢をもつ勇ましい姿の人物埴輪で、6世紀の東国の武人のいでたちを知ることができる貴重な資料です。
まず、冑(かぶと)から見てゆきましょう。顔を守る頬当てと後頭部を守る錣(しころ)が付いた日本列島独自の形の冑です。鉢の部分には粘土の小さな粒が貼り付けられています。これは鉄板を組み合わせ、鋲でとめて作られていることを忠実に表現したものでしょう。甲(よろい)も小さな鉄板を綴じあわせて作られていたようです。腰を守るスカートのような草褶(くさずり)がついていますね。さらに、肩や膝を守るパーツ、手を守る籠手(こて)や、臑当(すねあて)、沓甲(くつかぶと)など、細かい部分や構造までしっかりと表現されています。なお、後ろ側には蝶結びにした紐がついているので、紐を結んで装着したのでしょうか。
次に武器を見てみましょう。腰には太く長い大刀(たち)を提げ、左手に弓を持っています。左手首に巻かれているのは弓を引くときに、手首を守る鞆(とも)でしょう。背中には鏃(やじり)を上に向けた5本の矢が入った靫(ゆき)を背負っています。まさに、フル装備のいでたちですね。
この埴輪が出土した群馬県東部の太田市周辺では、同じような特色をもつ武人埴輪が数体出土しています。これらに共通する高い技術とすぐれた表現力から、この地域には埴輪作りを専門とするプロ集団がいたのではないかと考えられています。