墨蹟「不生」
ぼくせき ふしょう
概要
筆者の盤珪永琢(1622~93)は、長崎に来日した黄檗僧・道者超元(1602~62)に、その悟りが釈迦以来の正統なものであると認められた、江戸時代初期の臨済僧。本作品は、その禅の極致を表す「不生」の2字を濃墨で揮毫したものである。不生とは、人間誰しもが生まれながらに備わった仏の心のことで、その心のままでいれば活きた仏であると説く。その書は、漢時代に起源をもつ章草という草書体で記され、関防には黄檗墨蹟に通有の「臨済正宗」印が押される。こうした点から、中国明時代の禅文化や中国の書の歴史に通じた筆者像が見て取れる。なお、盤珪永琢が「不生」と揮毫した墨蹟には、隷書体(八分隷)のものが通例で、草書体の本作品は珍しく、貴重である。