暁に開く花
概要
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暁に開く花
Japanese Morning Glories
1934年
紙本彩色・軸 43.2×62.2cm
第7回院展の《京の舞妓》で徹底した細密描写を試みた御舟は、さらにセザンヌやキュビスムの考え方から琳派をはじめとする日本の古典の技法まで、さまざまなものを加えながら新しい境地を開拓していった。前者は1921年の第8回院展の《溪泉二図》に代表される作品、また後者には写実的方向を徹底させながら、そこに一種の幻想味と不思議な存在感を示す《炎舞》のような作品、そして際立って琳派の装飾的構成法の影響を示す《翠苔緑芝》(1928年第15回院展)、《名樹散椿》(1929年第16回院展)などが挙げられよう。この作品は晩年に数多く描いた花鳥画の一つであるが、朝顔の蔓を中心とした巧みな画面構成、いかにも御舟らしい写実的描写、あるいは銀砂子のきわめて効果的な使用法などほとんど完壁ともいえる技術によって、写実性と装飾性とをみごとに融合させ、さらにそこに一種の幻想味を漂わせるなど、晩年の御舟が立ち至った深い境地を示している。