打掛 浅葱綸子地貝桶文様
ウチカケ アサギリンズジカイオケモンヨウ
概要
輝くように美しい綸子(りんず)地を用いた打掛である。文様の主題は吉祥文様に含まれる貝覆(かいおお)いで、ここでは貝桶を全体に配置よく散らすようにあらわしている。 それぞれの貝は蛤特有の筋文を細やかに見せ、いずれも変化に富んだ表現がおざなりではない。また桶は六角形で台付とし、その側面に文様をほどこす。雲に春蘭、柴垣に萩、苫船に柳などが見られ、さらに菱つなぎや網代などの割付文様を加え細密画のような趣を見せる。施工は友禅染が中心で行きとどいた仕事振りをしめすが、貝や桶の紐に刺繍を加え、特に桶からのぞいた貝は変化に富んだ糸づかいが細やかである。江戸時代中期の友禅染では補助的なものであった刺繍が、ここでは重要視されており、時代の移りがうかがえよう。