摩耶夫人および天人像
まやぶにん てんにんぞう
概要
お釈迦様の母、摩耶夫人(まやぶにん)がお釈迦様を生むその瞬間を表した珍しい作品です。シャカ族の王妃であった摩耶夫人は、出産を前にルンビニー園という花園を訪れます。そこで花の咲いた無憂樹(むゆうじゅ)という木の枝に手をかけたとき、右脇からお釈迦さまが生まれました。お釈迦さまは生まれてすぐに7歩あるき、世界のすべての人々を救うために生まれてきたことを宣言します。その時、梵天(ぼんてん)や帝釈天(たいしゃくてん)といった神々は香りのよい水をお釈迦様に注ぎ、その身体を洗ったと伝えられています。
作品を見てみましょう。摩耶夫人は右手を伸ばし、枝をつかむ仕草をしています。足を踏ん張り、左手を衣ごとかたく握っているのは、出産のために力を入れているのでしょう。右脇を見ると、小さなお釈迦様が合掌しながら生れ出ています。その周りには手に水の入った瓶(びん)などを持つ天人たちの像もあります。天人像の底には湾曲した棒が残っているものがあり、もとは宙に浮くように置かれていたと考えられます。この世にお釈迦様が生まれたことをお祝いする4月8日の誕生会(たんじょうえ)で、仏像に水などを注いで洗い清める灌仏に使われた仏像です。