仏涅槃図
ぶつねはんず
概要
釈迦(しゃか)の涅槃(ねはん)、つまり亡くなったときの情景を描いた絵です。北を枕に、右脇を下にして横たわる釈迦を、如来や菩薩、弟子たちが取り囲んでいます。樹の上のほうには、雲に乗って飛んできた釈迦のお母さん、摩耶婦人(まやぶにん)の姿が描かれています。
日本では、こうした涅槃図が平安時代から数多く描かれてきました。この作品は、鎌倉時代に描かれたもので、当時流行した宋時代の絵画の影響が色濃くでています。
まず、画家の視点が高くなっていることです。平安時代の涅槃図が、釈迦にぐっとよった横長の画面なのに対して、鎌倉時代の涅槃図はこの作品のように縦長になります。釈迦の前にできた広いスペースには、釈迦の死を悲しむたくさんの人びと、そして哺乳類はもちろん、鳥類、昆虫まで、50体を超えるいきものが描かれています。これらの人物の表情に注目してみてください。感情表現がリアルで人間くさいのも、鎌倉時代の特徴です。
いきものたちの表現も、とてもリアルです。特によく見ていただきたいのは、画面左下に描かれている小鳥や昆虫などの小さないきものたちです。たとえば、トンボは透明な羽根の細かい模様や、脚の先のぎざぎざまできっちりと描かれています。まるで写生画のように繊細で緻密な表現です。
是非、細部に目を凝らしてよく見てみてください。