角坏
かくはい
概要
焼き物でできた杯(さかずき)です。角杯(かくはい)という名前とその形からわかる通り、もともとは動物の角(つの)をくりぬいて作られていました。細くなっているところを手で持ち、お酒を飲んだのでしょう。中央アジアの遊牧民族が好んで使っていたとされ、それが朝鮮半島を経て日本まで伝わりました。このような種類の焼き物を須恵器(すえき)といいます。須恵器は、それまで日本で主流であった土器とは違い、窯を使い高温で焼きしめるので、硬く薄いのが特長です。また、水を通しにくいという性質もあるので、このような杯を作るのに適していたのでしょう。このような角杯は日本全国でいくつかの発見例があり、いずれも、朝鮮半島の影響を受け日本で作られたものです。
この作品は福井県の美浜町(みはまちょう)の古墳から見つかり、近くにはこの杯を焼いたらしき窯の遺跡も残っています。美浜町は若狭湾に面し、古くから大陸との交流において重要な場所でした。この杯が、古墳に死者と一緒に埋められた副葬(ふくそう)専用の器なのか、日常生活で実際に使われていたのかはわかりません。しかし、こうした品々から、当時の人々の生活様式が、大陸の影響を受けながら変わっていったことを読み解くことができます。