白薔薇
しろばら
概要
鹿子木孟郎(1874-1941)は岡山に生まれ、松原三五郎、小山正太郎に学んだ後、渡仏。アカデミー・ジュリアンでジャン=ポール・ローランスに師事しました。関西美術院の創設に関わり、20世紀前半の関西洋画壇の中心的存在でした。
本作は、装飾的な調度品を背景に、艶やかな風貌の日本人女性を、フランスのアカデミスムを意識した正確な人体描写により表現した、最晩年の裸婦の代表作です。薄布を膝に掛けた裸婦の足元には白薔薇が描かれ、ソファには手鏡が置かれています。鹿子木は西洋アカデミスム絵画に習熟していたため、作品には何らかの象徴的な意味を盛り込んでいたと思われます。赤を基調とする華やかな装飾は、オリエンタリスムを感じさせます。
実際、本作は神戸の老舗、オリエンタルホテルの旧蔵品でした。同ホテルは、1870年には外国人居留地(79番)で営業を始め、1907年に海岸通6番に移転、1964年には当館の東隣の京町25番に移り営業、多くの人々に愛され親しまれました。1995年、阪神・淡路大震災で大きな被害を受けて、解体され、旧外国人居留地内における、長年の営業の歴史に幕を閉じました。
・神戸市立博物館特別展『コレクションの精華』図録 2008
・三重県立美術館ほか『没後50年鹿子木孟郎』展図録 1988
・『オリエンタルホテル三十年のあゆみ』株式会社オリエンタルホテル 1956
【神戸と近代美術】