明清書画扇面集
みんしんしょがせんめんしゅう
概要
中国・明~清時代の書画名家の扇面形式によるコレクションで,中国近代の書画コレクションとして知られる小萬柳堂(しょうばんりゅうどう)旧蔵品である。
もとは,中国泰州(たいしゅう)の人・宮本昂(きゅうほんこう)(字(あざな)は子行(しこう))・昱(いく)(字は玉甫(ぎょくほ))兄弟が収集したものである。兄本昂は山東(さんとう)知県を,弟昱は直隷知県(ちょくれいちけん)を務めた人物であるが,50年にわたる官遊の間任地において収集に努め,明~清時代の800余人の書画家の扇面を『書画扇存(しょがせんそん)』6集,1053面という形でまとめた。これらの作品は,本昂の遺言により親戚であった廉泉(れんせん)(1863‐1932)に譲渡された。
廉泉は江蘇(こうそ)無錫(むしゃく)の人であり,清末に上海で教育事業や出版事業に携わった。また詩人や書画収集家としても知られる。小萬柳堂コレクションは,廉泉とその妻・呉芝瑛(ごしえい)(1868‐1933ないし1870‐1937)とともに築かれたもので,呉芝瑛もまた,詩人や書家として知られ,慈善事業や婦女教育にも尽くしている。
廉泉は,大正時代に数回にわたり来日しているが,その際,自らのコレクションを持参し,東京大正博覧会や東京美術学校の展示会,神戸の南湖扇面美術館等でその一部を展観に供したり,図録や『扇面大観(せんめんたいかん)』等の選集の出版を行ったりしている。また,滞在中にコレクションの一部を売却しており,本扇面集も譲渡の交渉を大村西崖(おおむらせいがい)に託していることが知られる。
本作は,もとの『書画扇存』1053面のうち,210面が失われ,843面(書361面,画482面)からなる。初集から6集の各集が本集(上下)と別集(上下)の計24集にまとめられている。扇面は,それぞれ2つ折りの台紙の片面に貼り付けられ,本集は漆塗りの夾板(きょうばん)で挟み,別集は紙帙(かみちつ)でまとめる。宮兄弟の意にかなった作品については,台紙に「宮子行同弟玉甫寶之」「宮子行玉甫共欣賞」の印が捺(お)されている。
惲寿平(うんじゅへい)や王鑑(おうかん)・呉歴(ごれき)等,明から清時代の書画家を伝称筆者とする作品が幅広くそろい,惲寿平の作品68面については,重要美術品に認定されている。当時好まれた明清の書画家の形式や書風・画風を伝え,明清の書画史を通覧する資料として,資料価値がある。また,コレクションの来歴も明らかであり,これだけ大量の扇面書画がまとまって伝存する価値は高く,公開され研究に供されることは意義がある。
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国指定文化財等データベース(文化庁)