一遍上人絵伝断簡
いっぺんしょうにんえでんだんかん
概要
兵庫の観音堂(神戸市兵庫区の真光寺付近)で亡くなった時宗の宗祖・一遍上人とその高弟・他阿真教の布教活動を描く『一遍上人絵伝』(全10巻のうち、第4巻第5段前半の断片です。正応2年(1289)、病の床にあった一遍を西宮の神主が見舞いに訪れ、十念を授かる場面です。
一遍を中心に、老若男女、僧俗を求心的に配した構図は、釈迦の涅槃図を想起させ、一遍の聖性を強調する意図が読みとれます。
本図ともとは一連だった絵巻に「白山豊原寺亍時永徳元年八月 日」という墨書があり、此の断片もそのころの製作と考えられます。豊原寺は、福井県坂井市にあった白山信仰の大寺で、高野山や善光寺のように時衆の人々を含んでいたと考えられます。旧来の聖地を重視し、そこに融和していった時宗の活動を知る上でも貴重な資料です。
【中世の神戸】