十国峠(日金山)
じっこくとうげ(ひがねさん)
概要
十国峠(日金山)は箱根外輪山から南に続く尾根(標高765m)で,風衝(ふうしょう)によりハコネダケ,アズマササ,ミヤクマザサなどのササ類とハンノキ,アセビなどの低木林が優占している。日金山は古くからの信仰の地で,中世以降,伊豆山権現と箱根権現を結ぶ信仰の道の要所として,あるいは,「山中他界」として死者の集まる霊山として知られるようになった。
江戸時代後期における旅文化の発展に伴い,十国五島の景勝を望む好適地として知られるようになった。日金山からの眺望の特徴は,様々な絵画に描かれ,なかでも,葛飾北斎の『豆州(ずしゅう)日(ひ)金山(がねさん)眺望(ちょうぼう)絵巻(えまき)』(天保4年,1833)には周囲360度に広がる景色が一連のものとして表現されている。明治時代以降,数々の文学作品にも描かれて「十国峠」の名が普及し,伊豆・箱根地域を代表する観光地のひとつとして定着してきた。その地勢と植生の特徴から,富士山をはじめとした四周八方の景勝を望む好適地を成し,当地の歴史・伝統にゆかりの景勝地として親しまれてきた意義深い事例である。
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