和歌散書花鳥図屏風 松花堂昭乗筆
わかちらしがきかちょうずびょうぶ しょうかどうしょうじょうひつ
概要
「寛永の三筆」の一人松花堂昭乗(1584~1639)が描いたと考えられる四季花鳥図に自身が16首の和歌を散らし書きした六曲屏風である。
松花堂昭乗は、真言密教を修めた学僧で、能筆として名高く、「松花堂流」の開祖となった。また、多彩な描法で作画活動を行い、仏画ややまと絵風の人物画、写実的花鳥画など多様な作品が遺されている。絵画においても、同時代から高く評価され、江戸時代中期以降の絵師達に大きな影響を及ぼしている。
本作品は、金柑や瓜の蔓がからんだ篠竹、色付き始めた銀杏と紅葉し雪を被った酸漿を描き、さらに各植物には蝶や四十雀などの小鳥が配されている。それぞれが春夏秋冬にあてられている。 いずれも細密な筆致で描かれており、画風には狩野派や中国の写実的花鳥画を学んだあとがうかがえる。
屏風全体に金銀の砂子を撒いて、雲や霞を幻想的にあしらい、その合間には、葉室光俊(1203~1276)の撰になる『秋風和歌集』から採った和歌を散らし書きする。
金銀で装飾を施した地に、中国画風から得た表現様式を用いて身近な景物を四季絵風に配置し、流麗にして軽妙な筆致で和歌を散らし書きした本屏風は、温雅でありながら瀟洒な趣を示し、松花堂芸術の特性を示す作品として絵画史上に価値がある。