碇蒔絵大鼓胴
いかりまきえおおつづみどう
概要
大鼓は能楽で用いる打楽器で、小鼓と同様、胴・革・調べ緒からなるが、大鼓のほうが一回り大きく、胴は全長約28センチで、主に桜材で作られ、形も節が設けられて異なる。革は直径約23センチで、馬の尻や背中など厚手の革が多く用いられる。胴と革は調べ緒で連結されているが、小鼓のように締め付け具合で音の高さを変化させることはなく、演奏前に革を炭火にかざして乾燥させることで、高く硬質な音を出す。
初代折居(おりい)作とされる大鼓胴である。請(うけ)は磨地で、巣間(すあい)に浅い知らせカンナがある。黒漆地に碇を大胆に大きく一つ平蒔絵で、碇の綱を高蒔絵で表す。小鼓胴・大鼓胴は、上下を定めないような構図が多いが、本胴は上下が明らかで、しかも非凡な構図で配置した稀有な例である。
シテ方観世流・楠川正範(1907~1969)の旧蔵品である。