象形
しょうけい
概要
日本の抽象美術の先駆的画家・山口長男(1902-1983)は、1930年代から抽象的表現を推し進め、戦後に入ると、色彩の精選や形態の単純化などにより、独自の画風をいっそう深化させました。黒に近い色彩とともに画面を構成するのは、赤茶色と黄土色。自らの体質や気質との関わりも感じさせるというこの「性格色」は、前者が作者の生まれた朝鮮半島の、後者が中国南部辺りの色だと画家はいいます。一見すると幾何学的とも見える形態は、変化のある輪郭をもつ素朴なかたちで、「私の描く形は、呼吸するようにゆっくりと動くようでありたい」という作者の思いを反映しています。
大地の色彩と、温もりのある形態が息づく大らかな画面は、作者が求めた純粋な色やかたちが、つねに有機的なイメージを育んでいたことを物語るようです。