和歌懐紙(熊野類懐紙)
わかかいし
概要
「暁の紅葉を詠める和哥」と題して詠じられた一首懐紙で、今日「熊野類懐紙」と呼ばれるものの一つである。「熊野類懐紙」は、熊野行幸の途次の歌会によるものか、あるいは都における歌会の際詠じられたものか不明ながら、「熊野懐紙」の筆者と共通する人物のものが多く伝存することから名づけられた総称で、その執筆年代も「熊野懐紙」とほぼ同じ、正治2年(1200)ごろと推定されている。執筆者藤原雅経(1170〜1221)は飛鳥井家の祖で、和歌を藤原俊成に学び、定家と共に『新古今和歌集』の撰進に当たった人として知られ、法性寺流による覇気のある、豊潤な筆致にその能書ぶりが発揮される。一首懐紙は和歌を三行と三字の四行にわたって書くのを基本とするが、ここではかなり自由に揮毫され、書式が定型化される以前の、早い違例として貴重である。
所蔵館のウェブサイトで見る
公益財団法人 根津美術館