五鈷種子鈴
ごこしゅじれい
概要
明王や四天王を鈴身に表した仏像鈴は日本ではあまり普及しなかったが、仏像を種子(しゅじ)(梵字)や三昧耶形(さまやぎょう)(仏具・法具類)などで象徴的に表した種子鈴と三昧耶鈴が多く制作されている。本品は鈴身側面に二条の子持ち紐帯をめぐらし、その間地に五個の円相(月輪(がちりん))を置き、その中に蓮華座にのり火焔付きの光背をそなえた種子を表している。種子は金剛界五仏を表している。経年の手ずれのため把は磨滅した部分もあるが、中央に大形の鬼目をつくり、その上下に2本の紐で締めた八葉の蓮弁帯をめぐらす。鈷部の占める割合は大きく、脇鈷の張りも強く、これらの特徴は制作が鎌倉時代前期であることを示している。総体一鋳で鍍金は当初からなかったものと推定される。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.290, no.59.