駅の裏
えきのうら
概要
本作品は、東京駅八重洲北口側から写生した風景である。画面右下に「M. SHUN 17.1」の署名・年記があり、1942年1月に制作されたことがわかる。竣介はその前年10月に《ニコライ堂と聖橋》(東京国立近代美術館蔵)、12月には《市内風景》(個人蔵)、《橋(東京駅裏)》(神奈川県立近代美術館蔵)を制作した。そしてこの作品と同じ1942年1月の年記をもつものに《議事堂のある風景》(岩手県立美術館蔵)があり、東京都心を描いたこれら一連の作品は1942(昭和17)年2月1日から3日にかけて日動画廊で開催された「松本俊介第2回個人展」に出品されている。
本作品の裏面を見ると、木枠下辺には、日動画廊のシール、それに木枠中桟部分に「淀橋区下落合四丁目2096番地/松本俊介」のスタンプがうっすらとであるが確認できた。以上のことから、本作品は、上記日動画廊での第2回展に出品された、同展覧会目録に掲載されている『No.24驛の裏(12号)』に該当すると考えられる。その後は今日に至るまで、展覧会には一度も出品された経歴がない。
本作品は過去に一度修復が施されており、おそらく裏面の裏打ちとワニス、一部の補彩はそのときのものと思われる。ワニスは、過度に塗布されており、そのためにワニス成分を吸い込んだ亀裂部分が目立ち、その黄変色が鑑賞上障害となっていた。その後ワニスの除去と亀裂部分などの変形修正等の修復措置が行われた。