文琳茶入 銘 白玉
ぶんりんちゃいれ しらたま
概要
文琳は唐物茶入の形のひとつで、ほぼ球形をした小形の茶入である。口が小さく、球形をした胴部には粗めの轆轤目がまわっている。釉は甑といわれる頸部から胴裾まで地釉が施され、これに瑠璃色の釉と黄雨釉が流れて裾で寄り合い、底で露となって見事な置形を作っている。底は朱泥色のねっとりとした土を見せ、不規則な横筋が入っている。釉の光沢と景色、円やかな姿などから、文琳のなかでも優れた作行きの茶入である。
「白玉」の銘の由来は明らかではないが、丸屋は京都の丸屋林斎が所持していたことに拠ったものである。その後本願寺に伝わり、さらに伊達家を経て徳川幕府に献上され、次いで将軍綱吉から松平伊賀守忠周が宝永5年(1708)の御成に際して拝領し、代々伝えられた。大正2年(1913)に同家から根津嘉一郎へ直接譲り渡されたものである。外箱の蓋表の「拝領 白玉 文琳」は松平伊賀守忠周の筆で書き付けられている。
正法寺緞子と白地宝尽小牡丹唐草文金襴の仕覆が添っている。正法寺緞子は、縹地に二重蔓の唐草と桔梗などの小花を織りだしたもので、同種の裂に定家緞子がある。内箱には白地草花文金更紗、中箱・外箱には茜地糸杉文更紗が添う。仕覆箱の包布は山鵲手と呼ばれる古渡りの白地山鵲花唐草文更紗で、保存状態が良く色の鮮やかさも失われていない。
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公益財団法人 根津美術館