馬図
うまず
概要
祥啓は、上洛し芸阿弥について画を学んだ際、相府すなわち室町幕府の所蔵する画本を目の当たりにし、これをことごとく模写したと伝える。『御物御絵目録』ほかにみえるように、当時将軍家には、義満以来の多くの舶載宋元画が収蔵されており、祥啓は芸阿弥を通してそれらを実見し、模写する機会を得たに違いない。本図は、そうした宋元の院体写生画を学んだ祥啓の成果を示す作品で、駿馬とそれを調教飼育する胡人の姿を、肥痩のある謹厳精緻な筆描と、墨色に淡彩を加えた賦彩法によって捉え、気品ある画面に仕立てている。中国で画馬の名手といえば、唐の韓幹、北宋の李龍眠や元の趙子昴、任仁発(月山)などが知られ、こうした画家たちの馬図が舶載されていた可能性は十分考えられる。祥啓は、それらのうち本図を描くに当たっては、とくに李龍眠の白画やそれを継ぐ子昴の描法に倣ったことがうかがわれる。図中に「賢江」(朱文重郭方印)、「祥啓」(白文重郭方印)の二印を捺す。
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