初春閑村
しょしゅんかんそん
概要
広島県尾道市の郊外、高須村太田地区の写生に基づく作品です。うららかな陽射しとすんだ空気のなか、淡い色使いで白梅咲く春の村落の情景が表されています。子守りをする年配の女性と若い農婦とが立ち話をしていて、その左手の歩道では雀が集まってさえずり合っています。男たちは茅葺き屋根の上と下とで快活に言葉を交わしながら、葺き替え作業の真っ最中です。麦畑の緑がすがすがしく、備後地方名産のイグサの苗も元気に育っているようです。
森谷南人子は、岡山県笠岡市生まれ。本名は利喜雄。神戸での小学生時代に村上華岳と出会ったことをきっかけとして画家の道に進みます。その後京都市立絵画専門学校に進み、本格的に画技を磨きます。1918年の国画創作協会創設以来、1928年の解散まで出品を続けます。1920年より尾道に移住し、以後同地を創作活動の拠点としました。帝展や日本南画院展にも積極的に作品を発表しています。