大般若経 巻第四百六十(中尊寺経)
だいはんにゃきょう かんだい460(ちゅうそんじきょう)
概要
藤原清衡(1056~1128)が発願して書写させ、天治3年(1126)に創建された中尊寺へ奉納した紺紙金銀交書の一切経、いわゆる中尊寺経のうちの1巻。紺紙に金泥で界線を施し、金泥と銀泥で1行おきに交互に経文を書写している。表紙は紺紙に金銀泥で宝相華唐草文を表わし、見返しは紺紙に金銀泥で釈迦説法図を描いている。中尊寺経は、中尊寺金色堂と共に奥州藤原氏の栄華を今に伝える貴重な遺品である。
中尊寺経のうち『華厳経(六十巻本)』巻第二に永久5年(1117)2月の奥書があり、また天治3年(1126)3月25日付けの「中尊寺経蔵別当職補任状案」に「於自在房蓮光者、為金銀泥行交一切経奉行、自八箇年内書写畢」とあって、中尊寺経は永久5年(1117)から8年程かけて書写されたことが知られる。中尊寺経の当初の巻数は不明であるが、『貞元釈教録』に基づく5390巻に近い巻数であったと考えられている。現在、中尊寺には僅かに15巻を残すのみで、大半の4296巻(国宝)は高野山金剛峯寺に伝えられている。また観心寺に166巻(重要文化財)、東京国立博物館に12巻(重要文化財)があり、巷間に散在するものを合せれば、4600巻程度が現存していると考えられる。本巻はその中でも特に保存状態がよいものである。
奈良国立博物館の名宝─一世紀の軌跡. 奈良国立博物館, 1997, p.303, no.115.