絹本墨画淡彩白梅図〈呉春筆/六曲屏風〉
けんぽんぼくがたんさいはくばいず
概要
本図は藍染の色糸で織った絹地が絵絹に用いられている。おそらく、夜景を象徴すべく案出されたものと思われるが、呉春の優れた感覚を示す趣向となっている。幹や枝は墨の付立であらわし、胡粉により無数の花弁を浮き立たせる。背景は描かず、簡単な刷毛描きで示した土坡と、墨の濃淡によって空間を表現する手法には円山応挙の影響が認められるが、密生する小枝の描写にはなお、蕪村ゆずりの感覚がのこっている。こうした作風や落款の書体からみて、本図は蕪村様式から応挙様式へと移行をはじめた、寛政初年、呉春の四十歳前後の制作と考えられる。